Twitterフォロワー40万人超の志茂田景樹さんの心に響くメッセージたち
直木賞作家・志茂田景樹さんの新刊『9割は無駄。』(あさ出版)では、志茂田さんが「人生の9割が無駄である」と話す理由とともに、私たちの背中を押してくれるメッセージが多数紹介されています。
「人生の9割は無駄なのだ。あとの1割の中で結果が出る、と開き直れ。無駄だと思っていることはけして無駄じゃない」
そう語る志茂田さんの言葉に心を救わる人は多いはずです。
本書では、私たちに力をくれる、心を癒してくれるメッセージがたくさん紹介されています。
その中から、ここでは1つのメッセ―ジを抜粋してご紹介します。
自分を不幸せに見るな。1割の幸せを見つけろ。
その輝きが、9割の翳(かげ)りを明るくする。
1割が幸せなら残りの9割は不幸せってことか、と思うかもしれない。
そうだよ。それでいいんだよ。
※ ※ ※
わが家の庭木の1本に、4年前の春先から巣箱が取りつけられている。穴のサイズはシジュウカラ用のものになっている。
3年間、シジュウカラは入ってくれないまま。春先には番(つがい)で下見にはきてくれたんだけどね。巣箱の上に乗ったり、そばの枝々をチョンチョン飛び移ってみたり、穴に止まって中を覗いたり…。
「ほら、いいマンションでしょ。入りなさい、決めるのよ」
僕と妻は家の中からカーテン越しに覗き見していて、妻は祈るようにつぶやいたんだけど、結局は飛び去ってしまう。他の番もやってきて、同じようにあれこれ点検していくんだけど飛び去っていく。
僕はシジュウカラが入居しないのは、2つの住みづらさがあるからだと判断している。1つは僕と妻が覗き見しているところから巣箱までは2メートルもないってこと。神経質な野鳥にとっちゃ気が散って落ち着かないのだろう。もう1つは穴のサイズがシジュウカラにとってはやや緩めなんじゃないかということだ。
しばらく前に、感動的で強く印象に残る事件が起きたんだ。
巣箱の直近の枝に、1羽のスズメが止まった。続いて、もう1羽、飛んできた。
2羽のスズメは巣箱の周りの枝々をチョンチョン飛び移った。使い勝手がいいか悪いかを確認しているようだった。
「巣箱へ下見のお客さんだよ」
僕の声に妻はいそいそと飛んできた。気配でシジュウカラなら飛び去っただろうね。
でも、スズメはシジュウカラより人に慣れている。だからか、飛び去らなかった。
「何だ、スズメなの、こなくていいのに」
妻は落胆した。
その直後のこと、2羽のうち心持ちスリムに見えたほうが巣箱の穴を窮屈そうにくぐって中へ入った。
どうやら、外に残って鳴いている様子のスズメがオスのようだった。すぐにメスが穴から出ようとして胸のあたりまで姿を現したけれど、もがくような感じだった。
その刹那、オスがクチバシでメスの胸の羽毛を挟んで引いたのよ。メスの体はスッと外へ抜けた。
番のスズメは相次いで飛び去ったよ。
「感動もんだわ。深く愛し合っているのね。スズメは感性豊かで賢い鳥なのね」
妻の声は幸せいっぱいに感極まっていた。
それまでの妻は、今日も入らなかった、と毎日嘆き、春の終わりには、今年もついに入らなかった、と不幸に支配された表情だった。
この数年はそんな状態だったのよ。それが時間にしたら1分もなかったんじゃないか、番のスズメがやってきて飛び去るまでの時間だけど。
1割どころか、一瞬の幸せだろ。その幸せが数年越しの不幸せの翳りを拭い去ったってことだ。
ところで、その感動的な事件があって10日も経たないうちに、妻は「ああ、シジュウカラ、今日もこない」と不幸せそうにつぶやいた。
いいか、みんな、喉元過ぎれば熱さを忘れる、んじゃ元の木阿弥だぞ。
1割の幸せを見つけろ、見つけたらそのことを忘れるなよ。
一生心に留めておきたいメッセ―ジが見つかる
Twitterで毎日つぶやかれるメッセージは、私たちが人生につまずいたとき、悲しいとき、八方塞がりで立ち止まってしまったとき、そんな苦しいときに心に響きます。
今とても苦しくて、人生を無為に過ごしていると感じても、そのあとの1割で結果出ると思えば、きっと元気に過ごせるのではないでしょうか。
(文=編集者)
志茂田景樹(しもだ・かげき)
直木賞作家。2010年4月開設の Twitter@kagekineko はユーザーに的確なアドバイスを送る人生相談で超人気アカウントになっている。フォロワー数は40万人を超える。
【今回のグラドク美女・森のんの】